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天下の吉本興業にあって、天下のジャニーズにないもの [便利な情報(補助金など)]

日本最大級の芸能事務所を2つ答えろと問われれば、みんな「吉本興業とジャニーズ」と答えるだろう。どちらも日本のコンテンツ産業の雄である。しかし、同じコンテンツホルダーでも、大きな違いがある。その違いは、今後、さらに大きな差異になっていく予感がする。

 ジャニーズが肖像権に厳しいとは知っている。それを守らなくてはいけない事情も、広告畑で長くビジネスをするものとして分かっているつもりだ。しかし、『小学五年生』の表紙に「Hey! Say! JUMP」を起用することを承諾しながらも、ネット内の掲載を、ここまで管理しているとは……。感心する一方で、これってデメリットも大きいのではないかと心配したりもする。

●肖像権&著作権に厳しいジャニーズ事務所

 肖像権&著作権に厳しいジャニーズ事務所は、ネット内でも、その強硬な姿勢を貫く。YouTubeなどの動画サイトでも、その姿勢は揺るがず……徹底した削除が行われる。

 コンテンツそのもの=芸人の肖像権や版権は、守られて当然である。法律的にも、それが認められているのなら、裁判で芸人事務所側が勝つのは仕方ない。流行っては消えていく、芸人の一発ギャグであっても、一般に、(1)人間の知的活動であり、(2)芸人独自の創作によるものであり、(3)言葉によって具現化され、(4)知的活動に当たるもので、(5)文化的な所産に属すると規定すれば、著作権の対象に該当するらしい。

 しかし、吉本興業は、そういう著作権や版権を守ることにあえて躍起にならない。YouTubeなどは、野放し状態ではないかと思えるくらい、緩いっ。むしろ反対に、2007年8月にはYouTube日本語版の国内パートナーとして名乗りをあげ、同年11月末からはニコニコ動画内に「よしよし動画」を立ち上げたりもしている。番組制作に欠かせないコンテンツの権利者でありながら、その地上放送局が敬遠しているようにも映るコンテンツのネット配信も積極的に推進している。

●転んでもタダでは起きない吉本興業の商魂

 ジャニーズと吉本興業。同じコンテンツホルダーでも、そこらへんの考え方が、大きく違うのだ。では、なぜ、吉本興業は、芸人の著作権や版権を守る立場でありながら、ゆるーい姿勢を貫くのか? ネットと手を組む方向に進むのか? 絶対、そこには、転んでもタダでは起きない商魂があるはずだ。

 株式会社よしもとファンダンゴの前の代表取締役社長である中井秀範氏が、cnet japan.の『「見て欲しい」の本質忘れるな』という記事内で、そのことについて触れておられるので、要約させていただく。

 中に入ってこそできるビジネスがある。

 YouTubeに関していえば、「中に入ってこそできることがある」という考えが念頭にあります。弊社所属タレントも関係する違法コンテンツが数多く存在しているわけで、それらを削除してもらうにあたって内側から改善要求した方が効果的と考えたわけです。

 原則のぶつかりあいは、時間のムダ。

 権利者と運営者の議論を見ていて思うことですが、原則対原則のぶつかりあいを続けていても事態は動かない。特に権利者側の方は、ネットが進化するスピードに置いていかれかねない。だからといって、一権利者として放置していくわけにもいかず、正式にパートナーとなることを選びました。

 動画の二次創作者の才能に期待する。

 ニコニコ動画については、音楽でいうリミックス的な、コンテンツの有効な二次創作能力に注目しています。こちらから権利フリーの映像を提供し、それを使ってよりおもしろい作品ができあがれば幸いと。権利侵害映像を利用した二次創作物は評価として日の目を見ないので、あえて権利フリーの映像を提供し、新たな才能の発掘に期待しています。

 ファンを一方的に悪者扱いできない。

 単に「おもしろかったから、皆にみてもらおうとしてアップロードした」というお笑いファンを一方的に悪者扱いしてよいものかどうかは疑問です。吉本興業は そうしたファンの方に支えられて会社を運営しているわけで、その「皆に広めたい」というパワーをうまく取り込むことができれば、弊社にとっても大きなプラ スとなることは間違いありませんから。

 ネットでの勝手な増殖は、コアファンを創る。

「ネットで売れるのはロングテール」。そうしたロングテールコンテンツを購入していただけるのは、本当にお笑いの好きな、コアなファンの方々です。そうしたファン層を増やしていくことが、ビジネスの成否にもつながります。

 YouTubeやニコニコ動画は、そうしたコアなファン層を拡大してくれるものと期待している面もあります。もちろん、吉本にも「やりたくてもやれないこと」はある。それでも、できる限りのことをすぐに実行し、ネット配信における権利者のパイオニアを目指していきたいと考えています。

●ネット中に入り込む吉本興業

 テレビのバラエティ番組の中で、芸人同士が、他人のギャグをパクって笑いをとることがある。また、その姿を見て、他の芸人達が、さらにかぶせて行って笑いをとる。そんな構造をよく見かける。その元のギャグを開発した芸人は、その元ネタになったことを誇りにさえ思う……いわゆる「おいしい」状態だ。

 吉本興業は、コンテンツホルダーとして、あえてネットの中に入って、一番「おいしい」状況をビジネスで創ろうとしている。

 「見て欲しい」という芸人の心理を上手に活用して、「おもしろかったから、皆にみてもらおう」というネットの向こうの二次制作者の労働力をタダで借りて……課金ビジネスにつながるコアなファンの裾野を拡げていく。変に、著作権や版権を主張してその拡大のスピードを遅らせるより、ずっと合理的な考え方だと思う。

 地上波放送は、基本的に、無料である。マス向けに流したコンテンツはネット上でもタダ、と考えるのがユーザー心理というものだろう。「タダより恐いモノはない」ことを知るコンテンツホルダー老舗の吉本興業は、タダで一番ビジネスが拡がる方法を模索しているのだ。

 いかにコンテンツビジネスが高度化しても、「見て欲しい芸人」と「見たい視聴者」の需給のバランスが合わないと成立しない。そして、どっちみち、どうであっても……視聴者から「お金」をいただくのが、コンテンツビジネスの基本である。広告会社、広告主を経ているとはいえ、それも、元々はコンシューマーの負担。コンテンツ産業は、どう進化してもBtoCモデルであることは変わらない。その原点への回帰が、インターネットの加速によって進んでいると考えた方がよい。

 ことコンテンツ産業においては、そのことを実感しているヒトが多い。ネットに親しむほどに、肌で分かってくることがある。

●力のあるコンテンツは「基礎票」を持つ

 糸井重里さんは、「ほぼ日刊イトイ新聞」(ほぼ日)の中で、著作権・版権とインターネットの関係について、こんなコメントをされている。この発言に、激しく同意だ。

 僕は「ほぼ日」という小さなメディアで、直接に読者の声を聞きつづけているうちに、あまり常識的でない、よくいえば新しい考え方をするようになっていた。

 「コンテンツの力を信じる」ことが、どんなマーケティングにもまして大切だということだ。

 それじゃ、昔からの自称「良心的」出版社と同じじゃないか、と思われるかもしれないのだけれど、かなり違うのだ。

 力のあるコンテンツは、まず「基礎票」を持つ。その基礎票が、「ほぼ日」ではアクセスやメールによって、目に見えるようになる。そして、その基礎票がダイナミックに反射しあったり、結合したり、新たなニュースを生み出したりして、「それなりの市場」をつくってくれるのだ。

 このように考えると……ジャニーズの著作権・版権を徹底して守るという姿勢は、いずれ破綻(はたん)するのではないかと懸念する。逆の視点から考えると、ジャニーズ事務所は、所属する「1人1人のコンテンツの力」を信じていないから、強硬なのではないかと勘ぐってしまう。

 コンテンツの力を信じるとは、社会や視聴者を信じることにも、通じている。商魂とは、結局、何を信じるかにかかっているのだ……。(中村修治)

最終更新:4月8日12時16分

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