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欧州のギリシャ支援策は目くらまし [コラム集]

(2010年3月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


どちらに転ぶか予断を許さない会議がブリュッセルで再度開催され、深夜に入ってからの合意が再度なされ、首脳たちが成果を自画自賛する光景が再度繰り広げられた。


3月25日夜に発表されたギリシャのための「緊急融資合意」は、その時点では意義深い取り決めだと思われた。しかし一夜明けてから丹念に読み直してみると、実はほとんど目くらましでしかないことが分かる。

 欧州の首脳は世間をしばし煙に巻いただけなのだ。

 筆者が特に不可解だと思ったのは、ギリシャへの支援は市場金利での融資によって行われるという発表だった。これは、市場はギリシャに市場金利で資金を貸したがらないという含みが込められているとしか考えられない。何とも馬鹿げた話である。

金融支援の実行可能性にも実効性にも大きな疑問符

 実際、欧州連合(EU)が緊急支援を実行するような仮定上のシナリオすら想像しがたい。ギリシャが資本市場から締め出されない限り、EUの融資は実行されないし、そのような状況ではEUからの――それも法外な高金利での――融資で問題が解決するとは思えない。

 ギリシャ側のコメントの一部から推察するに、今回の合意の最大の狙いは、緊急支援の約束によって市場を心理的に下支えし、その間、ギリシャが支援を受けずにやっていけるよう努力するということだと思われる。

 だが、これは危険な信用詐欺だ。すぐにではないかもしれないが、いずれ裏目に出るだろう。格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、今回の合意は同社のギリシャ国債の格付けに影響しないと結論づけたことは、意外でも何でもない。

 ギリシャの問題は、資本にアクセスできるか否かというシンプルなものではない。実際、この国の財政危機が始まって以来、この点は特に問題になっていない。問題は、ギリシャの債務に課せられる金利が、同国の今後の経済展望から見て高すぎることなのである。

 ギリシャ政府は先日、財政赤字をGDP(国内総生産)比で4ポイント圧縮することを目指す緊縮財政措置を発表した。実行すればこの国は厳しい、そして恐らく長期の景気後退に陥るだろう。どんな国であれ、これだけの規模の財政緊縮を行う時には、こうした景気後退を乗り切るためだけにでも何らかの支援が必要になる。

 通常であればその支援は通貨の切り下げか、国際通貨基金(IMF)などによる低利融資のどちらかになる。両方利用できるのが理想である。しかし、ギリシャはどちらも利用できない。

最後の手段はやっぱりデフォルト?

 このような状況下では、ギリシャ政府がいずれどこかの段階で、デフォルトする方が財政的には得策だという結論に至る恐れがある。ギリシャ国債の70%を外国人が保有しているとあっては、なおのことだ。

 ギリシャ政府が抜け目なく行動するなら、まずEUから資金を取り込んだうえでデフォルトするだろう。いずれにしても、本当の意味での最後の手段はデフォルトであり、緊急融資ではない。債券投資家はこの点をしっかり心得ておくべきだろう。

 今回の合意とそこに至るまでの過程は、ユーロ圏のガバナンス(統治)とそれを長期的に支える政治的リーダーシップの態勢について、数多くの問題を浮き彫りにした。フランスのエコノミスト、アニエス・ベナシ・ケレ氏が指摘しているように、救済もしないしデフォルトもしない、さらには債務のマネタイゼーションもしないというのは論理的に矛盾している。

 従って、ここでは条件付きの問題解決の仕組みが求められていることになる。市場金利で行う融資、それも融資の実行についてユーロ圏16カ国の首相または国家元首が拒否権を持つというパッケージでは、この根本的な矛盾を解決することにはならない。

 ギリシャ政府は、ドイツでの次の国政選挙の1週間前にはしごを外されないように念を押しておいた方がいいだろう。

ドイツとECBの立場に折り合いをつけただけ

 EUで今回の合意が成立したのは、危機に対処する理想的なメカニズムだと見なされたからではなく、対立する2つの立場が妥協できる都合のいい仕組みだったからである。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相が最も重視していたのは、「救済はしない」というルールが厳格に守られるようにクギを刺すことと、緊急支援発動への拒否権を獲得することだった。要するに、ドイツは1セントも出したくないのである。

一方、欧州中央銀行(ECB)にとっての優先課題は、IMFの役割を小さくすることだった。そうしなければIMFがユーロ圏の経済政策について過度に大きな影響力を持つことになり、ECBの独立性も脅かされかねない、というのがその理由だ。

 従って、両方の立場に配慮したうえで論理的な対策を講じるには、発動の可能性が限りなく小さくなるように厳しい条件を課した精巧なメカニズムを作り上げるしかなかったわけだ。

 今回の合意ではギリシャの問題も、困難に直面しているほかのどの国の問題も解決できない。しかしメルケル氏の問題は解決できるし、ECBの問題(少なくともその一部)は解決できる。実際、EUの首脳たちは会議の間、ユーロ圏の将来に重くのしかかる2つの脅威――効果的な問題解決の仕組みがないことと、ユーロ圏内の不均衡という問題――の解決を試みることなど、つゆほども考えなかったようだ。

 その間、我々は先週も頭をよぎった不愉快な疑問の数々に悩まされることになる。

まだ答えが出ていない問題の数々

 ギリシャの緊縮財政措置は果たして現実的なのか。ギリシャはこの難局を切り抜けられるだろうか。もしポルトガルも窮地に陥ったらどうなるのか。スペインは、イタリアは大丈夫か。経常収支不均衡の問題に対処する計画はあるのか。ドイツは、ほかの国々にドイツへの収斂を期待する以外に、ユーロ圏結束のための責任を受け入れるだろうか・・・。どの疑問に対しても、まだ答えは出ていない。

 深夜に及ぶ首脳会議、合意成立の劇的な発表、そして首脳たちによる記者会見。これらが世界に好印象を与える非常に効果的な道具であることは、筆者も認めなければなるまい。特にメルケル首相は大変な説得力を持つ政治家だ。

 しかし、目くらましの政治で世間をずっとだまし続けることなど、できはしない。いつかぼろが出るだろう。

【提供:JBPRESS】
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