「事実で売る株」対「噂で買う株」

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　株式相場の“梅雨明け”は、いつになるのだろうか。ちょうど2週間前の当コーナー「多極化相場への歴史的“糸口”」（6月19日）で指摘したように、マーケットに停滞ムードが広がったのは6月16日以降。「指数でみる限り、当面、足踏み状態が続くだろう」と書いたが、政治の混迷ぶりを踏まえると、ギクシャクした相場は当面どころか、この夏いっぱい続く可能性すら出てきた。
　「噂で買って、事実で売る」という相場格言がある。「業績が良くなりそうですよ」――そうした噂を耳にした時点で機敏に株を買い、「やっぱり噂どおり、決算の中身は上々だった」と確認したところで素早く売る戦法だ。

　「事実で買う」のではなく「売る」のは、事前に流れた噂をベースにして株価が上昇した場合、相場が好業績をすっかり織り込んでしまったと判断しなければならないからだ。

　現在のようなモヤモヤした相場が尾を引き、7月半ばまでに6月12日の1万135円高値をクリアしないようだと、7月下旬から本格化する上場企業の今3月期第1四半期決算で、仮に噂（＝マーケットの事前予想）どおりの“良い数値”が出たにしても、いったん材料出尽くしの流れ、つまり「事実で売る」動きが広がることが考えられる。私の心配が杞憂に終わってくれれば良いのだが…。

　もっとも、相場はしたたかだ。よほどの迷走相場にでも陥らない限り、必ず突破口はある。その候補の一つとして、これまで私はロボット関連、中国関連、総合商社などに注目してきたが、今回取り上げるのはタイヤ株である。当然ながら、シェアトップのブリヂストン（5108）が焦点になる。

　ブリヂストンの場合、今年に入ってからの高値が4月3日に記録した1676円で、日経平均の高値形成日の6月12日とは2カ月以降の開きがあることが注目点の一つ。要するに、先行して調整局面に入り、休養は十分といえるのだ。
　今年9月からは、北九州新工場の第1期生産がスタートする予定。新興国を中心とするインフラ整備計画の推進を背景に、大型建設車両用のラジアルタイヤの需要見通しが明るいため、同工場の稼働は収益に貢献することになろう。2010年7月には、さらに第2期の生産を計画している。
　ＣＯ2排出削減に寄与する省燃費タイヤの開発・販売計画も推進中。環境タイヤ「ＥＣＯＰＩＡ　ＥＰ100」の売上げは今後、海外中心に伸びていくだろう。もう一つ見逃せないのが、太陽電池用のＥＶＡフィルム。2012年にかけて、生産体制を拡充し、接着フィルムトップの座を不動のものにする方針だ。こうした展開材料は、まだ株価に十分織り込まれていない。

　今12月期業績予想の前提となる為替レートは1ドル＝85円（前期実績104円）、1ユーロ＝115円（同153円）。為替の実勢レートから見て、今期の収益予想は保守的な計画ラインだ。業績内容は、「噂で買う」初動段階にあるとみていい。直近6月26日申し込み現在の信用倍率は0.86倍。売り残超過状態にある。

　このほかでは住友ゴム（5110）、横浜ゴム（5101）も今後、見直しムードが広がる公算が大きい。住友ゴムは2日、496円まで上昇。1月7日に付けた488円高値を更新し、新局面に踏み込みつつある。

【提供：モーニングスター】

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