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医薬品業界の「2010年問題」を考察 [アナリストレポート]

医薬品業界は、2010年前後に大型医薬品の特許切れが相次ぐ、いわゆる「2010年問題」を抱える。端的な例が、世界首位の米ファイザー。超大型の高脂血症治療薬「リピトール」が11年に特許切れを迎える。その売上規模は134億7600万ドル(08年実績)に及び、特許切れによる売上減は避けて通れない。「リピトール」の独占販売権を失えば、ジェネリック(後発)医薬品がなだれ込み、同じ成分を持つ製品同士で激しい競争が待っている。同社は対応策として、米同業大手ワイスの買収(総額680億ドル)に成功したが、効果は一部補完にすぎず、追加的な手段が必要との見方が支配的だ。大型医薬品の特許切れ問題は深刻である。 国内でも、アステラス製薬(4503)が主力医薬品の特許切れに揺れる。免疫抑制剤「プログラフ」、排尿障害改善剤「ハルナール」という主力両製品の米国での特許切れがそれである。前者は昨年4月に特許切れとなり、後者は今年10月に特許切れとなる。ファイザー同様に収益安定化に向けて企業買収を試みたが、結果は失敗に終わった。

 同社が、米大手CVセラピューティクス(以下、CVT)に対して買収提案したのが1月27日。CVTの普通株式1株当たり16ドルの現金を対価として全株取得(総額11億ドル)の予定だったが、3月12日に米ギリアド・サイエンシズが同20ドルの買収提案でCVTと合意したと発表。ホワイトナイト(友好的な買収者)の登場により、3月16日にアステラス薬は買収終結宣言を出すに至った。有利子負債ゼロ、資金潤沢な同社にとって新たな一手が注目されるが、のんびり構えるほどの余裕はないと思われる。

 過去を振り返ると、アステラス薬の誕生は、05年4月の旧山之内製薬と旧藤沢薬品工業との合併によるもの。その後は、05年9月に旧三共と旧第一製薬が経営統合・純粋持株会社化(07年4月に両者を吸収合併)した第一三共(4568)、05年10月に旧大日本製薬と旧住友製薬が合併した大日本住友製薬(4506)、同10月に旧帝国臓器製薬と旧グレラン製薬が合併したあすか製薬(4514)、そして07年10月に旧田辺製薬と旧三菱ウェルファーマが合併した田辺三菱製薬(4508)など国内メーカー同士の連合が基本だった。

 それが、外資系メーカーを巻き込んだグローバルな業界再編へのウネリが強まっている。今月3日には、大日本住友製薬が米医薬品会社セプラコール買収(総額約26億ドル)を発表したばかり。米国での販売体制を整備し、大日住薬の統合失調症薬「ルラシドン」の速やかな市場浸透、売上高の最大化を図り、開発パイプライン(新薬候補)の一層の強化も狙う。その大日住薬も、昨年に高血圧治療薬「アムロジン」が特許切れとなり、前3月期の営業減益につながっていた。

 医薬品業界を取り巻く環境は、「2010年問題」はもとより、度重なる薬価引き下げによる国内市場の成長抑制、新薬開発費の膨張などさまざまな壁にブチ当たっている。新薬開発には、1品目につき、数百億円規模の投資が必要とされる。しかも、すべてが順調に臨床試験を進め、最終的に製造承認申請が認可されるという保証はない。極めてリスクを伴うビジネスである。国内シェア拡大によるスケールメリット追求、さらに海外マーケット獲得に重点を置く、合従連衡の動きは今後とも続くとみられ、折に触れ話題を提供するだろう。

 市場の目は、インフルエンザ治療薬「タミフル」を発売する中外製薬(4519)や、09年度中に抗インフルエンザウイルス薬「CS-8958」の製造販売承認申請に向けて準備を進める第一三共などに目が向きやすいが、ほかにもキラリと光る銘柄がある。抗体医薬品分野の新薬開発で先行する協和発酵キリン(4151)、医療用漢方製剤トップのツムラ(4540)、新薬開発・販売ノウハウを持ちジェネリック医薬品を拡充する日本ケミファ(4539)。

 全般手掛かり難から、医薬品セクターなどディフェンシブ・シフトが起こっても不思議ではないのだが……。

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